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第71話 深夜の侵入者⑥

作者: 花柳響
last update 最終更新日: 2026-01-18 06:01:01

 彼は最後の数メートルを一気に詰めると、私を抱きしめた。

 いや、衝突したと言ったほうがいいくらいの勢いだった。

「……っ!」

「馬鹿野郎……! 外に出るなと言っただろう!」

 怒鳴り声。

 でも、私を抱きしめる腕は、肋骨がきしむほど強く、そして小刻みに震えていた。

「無事か……怪我はないか……!」

 彼の大きな手が、私の肩や背中、腕をせわしなく撫で回し、傷がないかを確認している。

「う、うん……大丈夫……」

「よかった……本当に、よかった……」

 征也は私の濡れた髪に顔を埋め、深く、長く息を吐いた。

 雨の匂いに混じって、彼の匂いがする。

 ムスクと、煙草と、そして焦燥の匂い。

 熱い。

 彼の体温が、濡れたシャツ越しに直接伝わってくる。

「ごめんなさい……私が、鍵をかけ忘れたから……」

「謝るな。俺の責任だ。俺が……お前を置いていったからだ」

 征也は私の顔を両手で挟み、雨に濡れた頬を親指で乱暴に拭った。

 至近距離で見るその瞳は赤く充血し、目の下には濃い隈ができている。

 一睡もしていないのだ。

 私のために、地球の裏側から、すべてを投げ打って飛んできてくれた。

「商談……大丈夫だったの……?」

「知るか。あんなもの、どうでもいい」

 彼は吐き捨てるように言った。

 数百億の利益よりも、私一人の無事が重要だと言い切る傲慢さ。

 それが、どうしようもなく嬉しくて、胸が詰まる。

「お前がいなくなるくらいなら、会社なんて潰れても構わない」

 極端で、狂気じみた執着。

 でも、今の私にはそれが必要だった。

 空っぽの私を
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